なぜ、オリジナルが必要だったのか?
1話「既成のウェットスーツの限界。」


トライアーティストでは、トライアスロン用フルオーダーウェットスーツの開発・販売・レンタルを行っている。今回は、2017年より新規事業としてスタートした、ェットスーツ「鏡花水月」「水陸両用」の開発の舞台裏について書いてみようと思う。

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トライアスロンでは、オープンウォーター(海や川、湖など)の環境でスイム競技を行う。近年では、安全面の配慮から多くの大会でウェットスーツの着用が義務付けられている。

大きな理由としては、ウェットスーツの浮力のサポートにより、泳ぎが苦手な方(初心者)でも沈まずに泳ぐことができる。また、20度以下の低水温で競技が行われる場合、身体が冷えて生じる低体温症などのリスクを、ウェットスーツの保温性能によって軽減することができると考えられている。(※状況や環境にもよるので、あくまで一般論として)


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ただ、着用が義務付けられる反面、競技者としてはデメリットもあるように感じる。

そもそも日ごろから着用する機会が少なく、全身を覆うスーツそのものに慣れていない。サイズの選択肢が少なく、自分に合ったものになかなか巡り合えないため、本来のパフォーマンスが発揮できない、など、様々な声もよく聞かれる。

実際、胸(胸郭)が締め付けられることで呼吸が困難になり、泳力のある人でもスイムをリタイアするというケースもある。また、肩まで覆うフルスーツの場合、肩周りの動作が制限されるなど、着用への不満も多い。

競泳出身の選手においては、別の悩みがある。元々ウェットスーツを着用しないスイムを追求していたため、ウェットの浮力により、泳ぎのバランスが崩れてしまうのだ。

かくいう自分も競泳からのトライアスロン転向組でスイムは得意。スイムを苦手としている選手に比べるとウェットスーツのアドバンテージをそこまで感じることはなかった。むしろ、多くの競泳出身の選手がコメントするように、「足にも浮力があることで逆にキックがうちづらく」なってしまう印象を持っていた。

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感じているデメリットは他にもある。例えば、日本や東南アジアなど高温多湿なエリア。加えて夏場の高水温のレースにおいては、ウェットスーツ着用による別のリスクが浮上してくる。スーツ内部にこもった水が温められ、体温が上昇。結果オーバーヒート▶脱水▶熱中症▶リタイア。それだけではなく、事故のリスクを高めてしまう。

とはいえ、自分も競技生活の中で、オーダー品、既製品含め、さまざまなウェットスーツを試してきた。
ウェットスーツを着用するとタイムは多少速くなった。ただ、フルスーツではレース後半になると、特に肩回りのストレスを感じ、スタミナを無駄に消耗する感じがした。また、他の競泳出身の選手たちのコメントにもあったように、キックを重視する自分の泳ぎにはデメリットが多かった。(脚が浮きすぎてしまうことで、泳ぎのバランスが崩れ、自分の意識する自然な泳ぎができなくなってしまう)


肩回りのストレス軽減のため、スキン(裏にジャージを貼っていないゴムだけの生地)のスーツも試したことがある。確かにストレスは少なかった。しかし耐久性の面で大きな問題があった。すぐに破れてしまうのだ。1回のレースで数万円するウェットスーツを使い捨てることはできない。

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さらに、海外製の高機能ウェットスーツ(10~12万円)も試してみた。確かに生地はよいものを使っている。幾分泳ぎやすい気もした。しかし、海外のレディメイド(既製品)のウェットはそもそもサイズが自分(日本人)には合わなかった。結果、大きければ内部に水が浸入して全体的に重くなる。逆に小さければ全身が締め付けられ、むしろ負荷に変わってしまう。やはり、フィット感ではオーダー品には遠く及ばない。

どんなに質が良くても、海外向けに作られたウェットスーツに、自分(日本人)の体型を合わせることはかなり難しい。
トライした既存のギアでは、もはや自分が望む条件をクリアできるものはなかった。


「今あるものに合わせる ▶ 順応 ▶ 妥協?」

ウェットスーツは我慢して着るものなのだろうか?スーツに合わせるものなのだろうか?いやそれ以前に、 身体を主とするアスリートとしては「道具に体を合わせる。」ということは、そもそもいらぬ制約でしかないのではないか?純粋にアスリートとして、トライすればするほどに葛藤した。
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自分にフィットした、最適なものは望んではいけないものだろうか?
いや、そんなことはない。ないならば作ってしまえばいい。

どうせ作るならアスリートして自分が望む、本当に自分に合った”Best of the Best
世の中にはない究極&最速のウェットスーツ。

2016年秋。理想のウェットスーツの開発を決意した。 

次回、2話 「究極のウェットスーツ、開発始動!」 へ続く。