自分で作るなら妥協は必要ない。
第2話 「
究極のウェットスーツ、開発始動!


「はじめて、オリジナルのウェットスーツを作る」ということに、不安がなかった訳ではない。

しかし、それ以上に既製品では満足できない、もやもやした気持ちの方が大きかった。(※第1話 「既成ウェットスーツの限界。」 参照」


何より、自分の可能性や挑戦を、ギアや環境などによって制限されることにジレンマがあった。直接身に付けるものだから、より自分にフィットしたものさえあれば、自身のパフォーマンスをフルに発揮できるという確信もあった。だから、正直不安よりもチャレンジしたい!という想いの方が強かった。

決心してからは、本当に展開が早かったのを覚えている。既製品に抱いていた不満が、そのまま明確な改善点として見えていたからだ。さらにオリジナルであれば、自分の考えるアイデアを盛り込むこともできる。むしろ期待の方が膨らんでいった。

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かくして、オリジナルのウェットスーツの開発は、竹内鉄平の挑戦からトライアーティストのチャレンジへと変わった。どうせ作るのなら、最高のものを。スタッフとの話し合いやアイデアだしなどは、移動中の車内にまでに及んだ。みんなで考え、辿り着いた3つのコンセプト。


理想のウェットスーツのコンセプトはこうだ。

    スーツの素材に妥協しない。現状考えられる最高のラバー(※ゴム製)生地を使用。

    本来のスイムパフォーマンスを発揮できるだけでなく、サポートできるウェットにする。
※速い人はより速く、泳ぎが苦手な人はより楽に泳ぐことができる。

    自分(竹内鉄平)が考え追求し続けている身体操作法『水月』の理論をベースに設計
※水月とは鳩尾(みぞおち)のこと。胸骨を意識し、操作することで得られる身体操作法。
(※水月理論はまたの機会を設けて解説したい。)

スタッフと話し合い、そしてスクール会員さんにも意見を求め、導き出した結論。
それはシンプルに自分たちが 「心の底から使いたい!」 と思えるウェットスーツを作ること。結局のところ、みんなと一緒にたどり着いた答えは同じだった。

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(スクールのスタッフ&メンバーたちと。)

まずは、作ってみないことには始まらない。

早速、取引先の方のツテを頼り、ウェットスーツ専門の職人さんを紹介していただいた。電話でのやりとりではなく、工場へと向かい、直接職人さんに自分の想いと理論を伝える。勢いで飛び込んでいって、こんな理論や注文を伝えて大丈夫なのか?そう思ったのを覚えている。

竹内 「ココがこうなって、とにかくコレをこうしたいんです。それで、こっちの生地ではこんなことをして、さらにココがこう!こういう処理とかできませんか??(※企業秘密)」

職人 「あ~~、それマジっすか~??」

竹内 「とにかく最高の素材を使って、最高のウェットスーツが作りたいんです!」

職人 「そうなんですね~。わっかりました~!!」

気さくな雰囲気の職人さんは、自分の抱いていた不安をよそに、驚くほどあっさりと、そして気軽にウェットスーツの試作を引き受けてくれた。


果たしてどんなウェットスーツが出来てくるのだろうか?

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ウェットスーツケースの試作品第1号は、1週間もせずに手元に届いた。

まだロゴも入っておらず、飾りなどは一切ない、できたまんま。とにかく急いで自分の伝えたものをカタチにしてくれた本当のプロトタイプだ。

 

一刻も早く試着、試泳をしてみたかった。
翌朝、
自分が主催するトライアスロンスクールのスイムセッションには、まだ未完成のプロトタイプを携え、期待に震える自分がいた。 

 

はじめて試泳した時のことは、今でも鮮烈に覚えている。


「な、なんなんだ?これは??」「これ……とてつもなくヤバいやつだ!!」

想像以上の感覚と純粋な驚きで、泳ぎながら笑いが止まらなかった。
今まで着てきたウェットスーツとは、明らかに感覚が違う。というより比較にならない。

驚いたのは、とにかく腕を回すのに肩回りのストレスがない。
今回の試作品は、もちろん強度面も踏まえてスキン(※ゴム製のみの生地)ではなく、裏にジャージの貼られた破れにくい生地を使用している。それが、まるでスキンであるかのような着心地と動きやすさだった。


体感
した第一印象が果たして本物なのか?客観的な指標として、ノンウェット(非着用時)、他社メーカのーのスーツ着用時、オリジナルの試作スーツ着用時と、それぞれ100mのタイムを測ってみた。

 

スーツを着用しないノンウェットスイム(基準) ・・・・・・・・    0秒/100m

他社メーカーのスーツを着用したスイム    ・・・・・・・・   5秒/100m 短縮

オリジナルの試作スーツを着用したスイム      ・・・・・・・・ 10秒/100m 短縮

 

ウェット非着用時と比較すると10秒速く、他社メーカーのスーツと比較しても5秒も速い。


競泳出身の自分にとって、この成果はとても大きかった。これまで、もともと泳力がある分、ウェットスーツを着用してもスピードが格段に上がることは望めなかった。それがオリジナルのスーツによって、100mで更に5秒の短縮。競技距離の1500mに換算すると、75秒も速くなる計算だ。ウェットを脱ぐトランジションタイム(30秒)を差し引いても45秒のアドバンテージ。これは既存のスーツでは得られない結果だった。(実際にスーツを脱ぐのにはわずか15秒しか掛からなかった。)

 

自分だけでなくはなく、スタッフをはじめ、会員さんにも試していただいた。皆さん一様に驚きと困惑の表情を隠せないでいた。(※後日400mのタイムトライアルを行ってもらったところ、自己ベストを30秒以上短縮されていた方もみえた。)

ただ、いくつかの点においては、まだまだ改良の余地を感じた。更なる進化が必要だ。

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ウェットスーツのコンセプトが固まり、プロトタイプによって明確な方向性が見えてきた。

このウェットスーツを世の中に知ってもらうためには、名前が必要だ。
分かりやすく他社のものと差別化できる、オリジナルのブランドとなる商品名が。

 

いくつか候補はあった。ただ、どれもしっくりこなかった。
ただ、さまざまなこだわりもあり、商品名は、漢字、それも四字熟語を使いたいという思いがあった。

 

そう思いあぐねていたとき、唐突に目の前にある答えに気がついた。
すべての原点は、そこに最初からあったのだ。


 その名は…  
『鏡花水月』!

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『鏡花水月』 その意味するところは

 

『鏡に映った花や水に映った月のように、目には見えながら手にとることができないもの。また、言葉では表現できず、ただ心に感知するしかない物事。』 (デジタル大辞泉より)

まさに、自分が考えている感覚でしか捉えることができない身体操作法、『水月』の理論を体現する言葉だ。

 

これしかない。商品名は決まった。あとは完成形へと近づけていくだけだ。
レースシーズンは4月から。逆算すると2月中旬までには何としても完成させたい。
年は明け、今は1月半ば。急ピッチで開発を進めていった。

 

絶対どこにも負けない、究極のウェットスーツ。
このチャレンジが間違いでなかったことが、ついに証明される時が近づいてきている。


第3話  「鏡花水月の快進撃!!」 へ続く。